設計の迷宮

迷子の道しるべ

04_初志貫徹

設計手順を整理するのは、効率的でミスのない設計を実現することが目的です。基本設計するために何が必要かという視点で検討してください。

まず、建築基準法と同施行令を遵守することが基本で、「建築物の防火避難規定の解説」という書籍は必読です。また、地域ごとに、基準法に制限を付加する条例があり、東京都安全条例なども併せて確認します。東京都の場合、「東京都安全条例とその解説」という書籍も必読で、地域によって条例の解説PDFが無料の場合もあります。

ネットで解説を探すことは大切ですが、必ず根拠条文の原文を読んでください。改正法に対応できていないネット解説もあります。原文を確認しない方が多いですが、曖昧な知識と解釈はミスの原因になります。

03_建築概要

敷地に複数棟ある場合は棟ごとにリスト化します。冒頭で建築計画の概要を纏めておきます。ざっくりで構いません。

  1. 建物名称
  2. 所在地
  3. 主要用途
  4. 耐火性能
  5. 主要構造部
  6. 構造形式
  7. 規模

◆主要用途には次の内容も記入し、複数の用途なら、それぞれ記載。

  • その用途の床面積
  • 確認申請での用途記号
  • 特殊建築物かどうか
  • 特建の番号:別表1(2)など

小学校(5,000m2)08080 ■特殊建築物 別表1(3)

事務所(8,000m2)08470 □特建でない

◆耐火性能は耐火建築物、主要構造部は耐火構造など

◆構造形式はS造、RC造など。基礎免震等があれば併せて記載。※構造評定だから

◆規模

  • 敷地面積(用途地域ごと)
  • 建築面積
  • 延べ面積(階ごとの床面積)
  • 最高高さ
  • 階数

用途地域ごとの面積があれば、建ぺい率や容積率の加重平均が計算可。階の床面積は制限を受ける場合もあるので、面倒でなければ。

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建物名称  〇〇〇
所在地   〇〇〇
主要用途  △△(×m2)080XX □特殊建築物 別表1(1)
耐火性能  □耐火建築物 □準耐火建築物 □その他
主要構造部 □耐火構造 □準耐火構造 □その他
構造形式  □S造 □RC造  □SRC造
規模    敷地面積 ××m2
      建築面積 ××m2
      延べ面積 ××m2
      最高高さ ××m
      階数 地上〇階建て

02_万能は目指さず

すべて用途に対応するリストは諦めます。例えば物販店舗なら1,500m2超、避難階段幅の合計など用途限定で制限がありますが、万能を目指すと膨大な項目数になり、設計する可能性がないのに、無駄な作業が増えるだけです。
自分で設計した建物が竣工していれば、それをベースに設計手順を整理することが最善です。意匠主任として経験がない場合は、自分が関わったプロジェクトの確認申請書を探し、トレースすることが簡単です。建築概要書、申請書(1~5面)、法チェック図など、手に入れられる情報を集めます。次の設計で活用するために、基本設計で確認すべき項目を洗い出し、整理します。ポイントはチェック項目を細かくしすぎないこと。敷地内通路や階段など、多く建物でいつも制限を受ける項目に絞ることが大切です。

01_はじめに

一級建築士として、少しでも効率的にミスなくプロジェクトを進めるため、メモ書きします。(内容は参考程度で。最終確認は、ご自身でお願いします。)新築2,000~15,000m2ぐらいの規模を対象にします。正直、手慣れた用途の設計なら、前回設計を参考にすれば十分ですが、経験や力量に差があり、担当部分だけというスタッフも実に多い。全体を把握しているリーダーが不在では迷子になるので、俯瞰して難解な迷宮を進む道しるべになればと。法令遵守は当然ながら、複雑すぎる法令もミスの要因で、基本設計の「法チェック表」要するに、確認すべき項目をチェックボックス(□や■)で列挙したものを自作しながら、設計手順を整理したい。参考となるリストはネットで見つけられます。それでも自分の目的にあったオリジナルを自作することが、設計スキルの向上と品質確保につながると思います。